新入社員教育の現場で求められていること

本年度も新入社員が入社し、2週間近くが経ちました。
企業によっては、1ヶ月近く新入社員研修が続いているところもございます。
弊社も4月1日より新入社員研修を行なっておりますが、
傾向として今年は、例年よりも内容が多岐にわたっているなと感じます。
昨年までは、ビジネスマナー研修に加え、早期離脱を避けるような
セルフマネジメントに関する内容への要望が多かった印象があります。
それに加えて今年は、ビジネスマナー研修に合わせて
その根底にある「気配り・心づかい」「先を読む力」についての内容を
研修に求める企業様が増えているように感じます。

ビジネスマナーの「型」だけを学んでも、いざ実践にとなると、
シーンごとにマニュアルがあるわけではないので
「学んだことが使えない」そういったケースが多いのでしょう。
そのため、その根底にある「気づかい・心づかい」にも焦点が当たっているのだと思います。
すでに身についてると思われる新入社員以外の方に対して
その根底部分を学ぶ研修を企業で取り入れる、という流れも加速しております。
表情が少ないので反応が見えづらい

年々、社員様や人事担当者様からよく耳にするようになっている話として
「新入社員の表情やリアクションが少ないのがとても気になる」ということがあります。
私自身もこの3〜4年、リアクションが少ないと感じる状況が研修中にございます。
もちろん、講師側の「関心を持ってもらうような研修」の設計や表現は大切ですし
講師スキルとして大事な部分ではあります。
ですが、反応が薄い=つまらなくて聞いていないのかな?と思ったら
実はそうではないことが多いんですね。
真剣に聞いて、真剣に参画してくださっているのです。
居眠りモードになる方もいらっしゃいません。
参画しているんですが、お顔の表情が非常に少ないのです。
「リアクションの術が乏しい」とも言っていいでしょう。
そのため現場に配属されてから、既存の社員様から
「何を考えているのかわからない」
「わかっているのかわかっていないのか、わからない」
などのお声があがることが多々ございます。
コロナのマスク生活が数年あったことも理由にあるかもしれません。
しかし、圧倒的にこれが理由だろうな、と考えられることがあります。
それは、大人とのコミュニケーションの経験値の少なさです。
大人と話すとしてもアルバイト経験のみ。
それもある程度の年齢になってから。
子供時代に、親戚のおじちゃん・おばちゃん、近所の人などと関わる経験が
圧倒的に少なくなっている、という状況が見受けられます。
現に研修中に聞いてみたところ、やはりそういう機会がほぼないとのことでした。
以前の日本では、各年齢層があったとしても帯のようにつながっていたものが
今や分断され、各層内でのコミュニケーションになっている影響かと思います。
研修では、なんとか表情を引き出せるように工夫をしながら関わっています。
そうすると徐々にリアクションが大きくなってきます。
研修内では
「職場に配属されたあと、新入社員から声を出すように」とも伝えておりますが、
ぜひ既存の社員様も、意識的に声がけをし、表情を柔らかくしていただければと思います。
「あなたにちゃんと関心を持っているよ」ということを
こちらからも、態度で示してみてあげてください。
心理的な安全を感じだすと、徐々に表情やリアクションが出てくるようになります。
継続して気長にアプローチしてみていただければと思います。
一方で、自分のことはとても気になる

年代問わず自分について知ろうとする流れはありますし、
むしろ今の方が強いかもしれません。
最近の流行りですと、「MBTI」という
韓国アイドルから広まった自己分析ツールをご存知でしょうか?
こちらのテスト、昨年、弊社の新入社員研修に参加いただいた方に
やったことがあるかと聞いたところ、100%が「やったことがある」でした。
今年も聞いてみたところ、今年も100%でした。
今までも、星座や血液型など色々と診断するものはありましたが
結果も話半分で見て、あまり真剣には信じていない人が多かったかもしれません。
一方で昨今の、アプリ上の自己理解ツールは
自分で直接回答をするので、結果への信ぴょう性が高いのでしょう。
ただしこの自己分析ツールには、少し問題があります。
自分と似ている似てない・共通性があるないを知っただけで終わり、になってしまうことです。
これは少し残念です。
弊社では「DiSC®」というアセスメントツールを利用した研修を行っておりますが、
ここで大事なことは、自己理解と他者理解であり
自己理解した上でどのように関わっていくか?という、
自分自身をマネジメントすることなのです。
良いところを伸ばしつつ、コミュニケーションエラーを起こさないようにする
「良い塩梅」を知るところが大事です。

自分自身に気づき、合う人とだけコミュニケーションを取ることは
ビジネスの場面ではありえません。
様々な方と関わりを持つ以上、自分と他者の違いを受け入れた上で
「どのように関わっていけばよいか」を学んでいくことが一番大切な部分です。
そのため、例えばある企業様では、新入社員全員にDiSCアセスメントを受講してもらい、
後日研修を行うという取り組みを採用されています。
社内に配属されてからの様々な社員とのコミュニケーションの取り方までの研修を
長期的に、具体的に取り組まれている形です。
実際、新入社員と既存の社員の間では、世代からくるジェネレーションギャップより
お互いが仕事で優先する事項やモチベーションの源、タイムマネジメント傾向の違いなど
そういう部分でコミュニケーションエラーが起きていることが多い、
ということが分かっています。
そのため、新入社員のみならず、既存の社員に対してもDiSC研修を行い、
自己理解と他者理解による「世代を超えたコミュニケーション」を学んでいただくことも
必要かなと思います。
「気配り・心づかい」そして「先を読む力」

先にも書きましたが、本年度から人事担当者様からのご要望で多かったのが
「気配り・心づかい」「先を読む力」です。
といいますのも、なかなかそういう機会に身体が動かない方が増えているようです。
例えば。
研修ではよくお弁当が用意されるのですが、お弁当が届いた際に
配るも片付けるのも人事の方、という場面が少なくありません。
指示をされれば動くのですが、指示がないと動けないのです。
先日は、食べたあとにゴミ袋に分別しまとめて運ぶことを
午後からの研修前にしないといけない、というシーンで
人事の方だけが動いてる、ということがありました。
新入社員の方は、それをなんとなく見ているだけで動かないのです。
そこで、午後の講義で私が最初にそのお話をさせていただいたところ
このようなお声がありました。
「実は気づいていたんですが、点数稼ぎに思われるかなと・・・」
「カッコつけていると思われるかな・・・」
「自分だけ浮かないかな・・・」
など、マイナス要因が浮かんで「動かない」という結果になっていたようです。
学生時代、良いことをすると浮いたように見えたり、いい子ぶっているとか、
先生に好かれようとしていると思われそう、と感じたことが多かったのでしょう。
その恐れから、気づかないふりをしたり、気づいても身体が動かない、
そんな状況をつくってしまっているようでした。
そこで、実際のビジネスの場ではこれは
「何もやっていない」「動いていない」としか捉えられていないよ、
という話をさせていただきました。
ゴミを片付けて欲しかった、片付けなかったということを責めたいのではなく
あなたは心の中で葛藤していたとしても、
人は、実際の行動からしか見えないし分からないんだよ、と。
そういった背景や理由などもお伝えすると、新入社員さんも理解してくださいます。
頭ごなしではなく、理解をするように話すこと。
それがここ数年の新入社員さんには重要になっていますので
ぜひ、職場でも既存社員さんにも取り入れて欲しいところです。

ビジネスマナーはなぜ必要か?
なぜ敬語があるのか?
なぜクッション言葉が要るのか?
なぜ姿勢が良い方がいいいのか?
「気配り、心づかい」も、皆さんの日々の中の事例を使ってお伝えすると
イメージしやすく、そういうことか!と腹落ちしやすいようです。
ただしこの「先を読む発想」は、今まであまり行ってこなかった方ですと、
なかなか急にできるようになるものではありません。
どんどん情報が多く便利な世の中になっていることで
逆に自分に都合の良い情報しか得ておらず、不便さを体験する機会が減っているためです。
そこで弊社の研修では、先を読むため、日々の発想の広がりを鍛えるために、
日々当たり前に目に入る情報から、なにを想像したり考えたりできるか?
ということをお伝えしています。
調べるツールは皆さん日々使われているので、その前に
一度考えるプロセスをはさむようにお伝えします。
このような時代背景にジェネレーションギャップを感じることでしょうが、
とはいえ、人間本来の持つエネルギーや心、力は、そんな数十年で変わるわけでもありません。
指導する側、迎える側にも、その意識を持って接していただくと距離が縮まると思います。
人が持つ本来の力を信じて、自社の社員を育てて人財にしていきませんか?